コニカミノルタ、太陽光発電の普及を促す画期的な開発…ペロブスカイト太陽電池の寿命を2倍に

●この記事のポイント
・コニカミノルタ、ペロブスカイト太陽電池の耐用年数を従来の2倍の約20年に延ばす保護膜を開発
・ペロブスカイト太陽電池の表面を保護して水分を通さない樹脂製フィルムを開発
・有機EL照明で培ったバリアフィルム技術を適用、コスト競争力も期待できる
従来のシリコン太陽光パネルが設置できない場所にも設置できる次世代太陽電池、ペロブスカイト太陽電池。薄くて軽くて曲げられるため、建物の壁面や窓などにも設置できるのが特徴で、シリコン太陽光パネルを設置できる用地が限られつつあるなか、普及に期待が高まっている。政府が2月に閣議決定したエネルギー基本計画では、電源全体に占める太陽光の割合を2040年度に23~29%にすると定めており、昨年11月には政府はペロブスカイト太陽電池について40年に原発20基分に相当する20ギガワットまで普及させる目標を発表。その普及を大きく後押しする技術をコニカミノルタが開発した。同社はペロブスカイト太陽電池の耐用年数を従来の2倍の約20年に延ばす保護膜を開発し、26年度にサンプル出荷を始める予定。耐用年数が延びればトータルでの導入コストが減るため、ペロブスカイト太陽電池の普及を加速させると期待が集まっている。具体的にどのような技術・製品なのか。コニカミノルタへの取材をもとに追ってみたい。
●目次
26年度にサンプル出荷を開始予定
日本発の技術であるペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイト構造を持つ材料で作られた太陽電池であり、従来のシリコン太陽電池と異なり、薄くて軽くて曲げられる。日本はすでに新たに太陽光パネルを設置できる適地が少なくなっており、平地以外のさまざまな場所に設置できるペロブスカイト太陽電池は太陽光発電の普及の切り札とされている。ペロブスカイト太陽電池はペロブスカイト結晶を溶かした有機溶剤を塗ったり印刷することができるため、薄いフィルム状の太陽電池をつくることができる。
弱点は水に弱いことだ。太陽光を電気に変換する発電層は、水に触れると性能が低下するため、耐用年数がシリコン太陽電池の半分の10年ほどとなっている。その弱点を克服する技術をコニカミノルタが開発した。ペロブスカイト太陽電池の表面を保護して水分を通さない樹脂製フィルムの開発に成功し、26年度にサンプル出荷を開始する予定。
ペロブスカイト太陽電池は2040年には世界の市場規模が2兆円以上に拡大する(富士経済による)と予測されており、普及に伴い保護膜の市場も拡大する可能性がある。
コニカミノルタが培ってきた材料開発技術の蓄積
このような製品を開発するに至った背景について、コニカミノルタは次のように説明する。
「コニカミノルタでは、有機EL照明で培ったバリアフィルム技術がペロブスカイト太陽電池に適用できるのではないかと考え、技術検証を開始しました」
具体的にどのような特徴を持つ製品なのか。
「ペロブスカイト太陽電池の弱点は水分であり、発電セルが水分を含むと分解し、発電性能が下がってしまいます。当社のバリアフィルムは水分を通さない性能がトップクラスであり、有機EL照明の際に屋外に設置した実践により実績があります。また、フィルムの生産技術もあるため、コスト競争力も期待できます」(同)
どのような技術によって、製品化が実現されたのか。
「コニカミノルタが培ってきた材料開発技術の蓄積により、前述のような耐水性のあるフィルム開発ができると考えています。まだ製品化しておらず、2025年度中に技術検証を終える予定です。早ければ26年度にペロブスカイト太陽電池用バリアフィルムの(量産品ではなく)サンプル出荷を目指します」(同)
同製品の導入により、どのような効果が期待されるのか。
「現在のペロブスカイト太陽電池の寿命は10年といわれており、一般的には既存の太陽電池の寿命が20年であるため、既存の太陽電池と同じ寿命(2倍)を目指しています。ペロブスカイト太陽電池の長寿命化、ひいてはペロブスカイト太陽電池の普及を促進し、再生エネルギー由来の電力比率を上げ、環境負荷軽減に貢献したいと考えています。また、フィルム生産のコスト安定化により、さらなる普及の促進につなげたいです」(同)
大手電力事業者関係者はいう。
「再生可能エネルギーの意義はもちろん脱炭素や環境負荷低減など『クリーンなエネルギー』という点にあるが、事業者や個人が太陽光発電を導入するかどうかを検討する際、現実的にはコスト削減効果がどれくらい見込めるのかが重要視される。なので電池の寿命が大幅に延びれば、長期的にかかるトータルコストが低下してくるので、より導入されやすくなる。よって、このようなバリアフィルムの登場はペロブスカイト太陽電池の普及を促すと期待できる」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)